文章入門 わかりやすい文章を書くために

4 最後に

 文章とは人間の知恵によって生まれた「伝える」「記録する」ための手段である。古代の記録は人間が、口づてに語り伝える口承伝承だった。人間の知恵の進歩によって、意思を伝える手段が誕生する。かつては記号や縄の結び方などの表現方法を用い、互いの意思を交換するとともに記憶の助けとした。やがて記号の進化により体系的な文字が誕生すると、文字を書き残す材料として、皮や骨、木や竹などが用いられるようになった。メソポタミアでは粘土に、エジプトではパピルスが用いられた。89~105年ごろ中国で木皮、麻くず、ぼろなどの植物繊維を原料にして、今日のいうところの「紙」が発明された。日本にこの技術が伝えられたのは推古天皇の時代(610年)ころといわれる。
 文字を表す手段として、紙とともに古今東西で進化していったのが筆記具である。筆と墨とすずりしかり、インクと羽ペンしかりである。パソコンも進化を遂げた筆記具だといえよう。筆記具は文化のシンボルだ。
 情報としての新聞は反復の文化である。野球の結果はテレビの実況中継で分かっていても、朝刊で確認する人が多い。本を読む人は少なくなっているが、以前より文字を読む人は増えているような気がする。それは、パソコンや携帯電話のメールで、文字が身近になったからだ。文字離れをしていた若年層に歯止めがかかったのではないかと思う。ただし、文章となっているかは疑問だが。文字はいつでもどこでも自分自身で確認できる。テレビ、ラジオを代表とする電波はリアルタイムだが、通過していく文化である。考える間もないほど展開が早い。それは、考える瞬間を第3者に全てを委ねているからだ。インターネットは、情報過多。真実を読み取る目をもつべきだ。辞書として使うなら有効な手段である。携帯電話のメールは、文字文化の新しい形である。昔でいうペンフレンドであろう。いずれにしても文字によって構成される文章は、書く手段(ペンからパソコン、携帯電話)が変わっていっても永遠に消えることはない。
 文字は、人間の科学そのものである。伝え、確認する人間だけが持つ文化である。携帯電話などの通信手段も科学の進歩であるが、長年にわたって人間が培ってきた文字をもっと活用し、大切にしていきたいものだ。

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