随想舎 

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足利尊氏と足利氏の世界

千田 孝明

 南北朝の嵐を駆け抜け室町幕府を開いた足利尊氏の生涯と、その尊氏を生んだ武家の名門足利氏の世界を探究した労作。
 栃木県立博物館とともに歩んできた著者の千田孝明氏は、昭和六〇年の企画展「足利氏の歴史─尊氏を生んだ世界」以来、足利尊氏と足利氏の研究を続けてこられた。おりしも、鑁阿寺の奥院で足利氏の廟所であった樺崎寺跡の発掘調査が始まり、さらに平成三年のNHK大河ドラマ『太平記』の放映が始まり、「尊氏ブーム」が起きると、その解説やら原稿の依頼が著者に集中した。さらに「足利学校と足利氏の遺産」が世界遺産登録を目指して動き出すと、世間の視線は「足利」に注がれ、著者にも様々な調査が依頼されるようになった。
 こうして、この間、著者には足利氏と足利尊氏に関しての論説や、依頼原稿や投稿原稿が蓄積していった。それらを一冊にまとめたのが本書であり、それは著者自身の足利氏と足利尊氏に対する思いの軌跡をたどったものでもある。

四六判/上製/256頁/定価1980円(本体1800円+税)
ISBN 978-4-88748-266-1
2012年10月10日発行

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著者プロフィール

千田 孝明  ちだ こうみょう

略歴
1953年、栃木県日光市生まれ。
1976年、東北大学文学部史学科卒業。
2009年、栃木県立博物館技幹兼人文課長退職。
現 在 日光市天台宗観音寺住職。
 栃木県歴史文化研究会常任委員長。
 栃木県立博物館名誉学芸員。
 栃木県文化財保護審議会委員。
主要著書・論文 『図説 栃木県の歴史』(共著・河出書房新書) 1993年。『栃木県の歴史』(共著・山川出版社)1998年。『知られざる下野の中世』(編著・随想舎)2005年。『人物でみる栃木の歴史』(共著・随想舎)2011年。「日光山をめぐる宗教世界」(『中世東国の世界1 北関東』 高志書院) 2003年。「日光山常行堂小史」(『日光 その歴史と宗教』春秋社)2011年、ほか。

目 次

はじめに

足利氏の歴史 ─尊氏を生んだ世界─
プロローグ──尊氏を生んだ世界への誘い/八幡太郎義家の登場/源義国と足利荘の起こり/足利義康と新田義重/義兼/義氏──足利氏の飛躍/泰氏/頼氏/不遇の自決をした家時/貞氏/高氏の登場/尊氏の想い

足利尊氏発給文書に関する覚書 ─原本による御内書の再検討を中心に─
尊氏の文書をみつめなおす/疑問視されていた五通の尊氏文書/五通の尊氏文書の再検討/尊氏がはじめた御内書/同じ祐筆の尊氏御内書/なぜ「御内書」なのか

足利尊氏の世界
南北朝正閏論と足利尊氏/尊氏を生んだ足利氏の歴史/武人──尊氏/政治家──尊氏/人間──尊氏

尊氏と足利の荘
足利氏と鑁阿寺 足利氏の氏寺──鑁阿寺/足利氏と足利荘のおこり──鑁阿寺前史/有力御家人足利義兼/足利義兼の仏教作善/義兼の足利における造寺・造仏活動と鑁阿寺の草創/鎌倉期の足利氏と鑁阿寺/尊氏以後の足利氏と鑁阿寺/大いなる足利氏の文化遺産──鑁阿寺

足利樺崎寺赤御堂考
樺崎寺の浄土とは/樺崎寺と赤御堂/阿弥陀法を修していた赤御堂/三尺七寸厨子入り金剛界大日并三十七尊形像と赤御堂/理真上人朗安・法円坊隆験と足利義兼/密教浄土信仰の寺─樺崎寺

足利学校と足利氏
足利学校と鑁阿寺/足利義兼の素意/学問所としての鑁阿寺/複合施設としての視点