栃木方言の源(ルーツ)を求めて
森下 喜一
栃木県に伝わる方言290語を、「動物」「植物」「季節や自然」「衣・食・住」など7項目に分類し、語源をはじめ使用地域などをやさしく解説するとともに、実際の使用例を豊富に掲載。栃木方言が楽しみながら理解できる待望の一冊。
A5判/上製/240頁/定価3080円(本体2800円+税)
ISBN 4-88748-130-6
著者プロフィール
森下 喜一 もりした きいち
1934年 栃木県佐野市仙波町(安蘇郡葛生町)に生まれる。
1958年 国学院大学文学部卒業。1963年 国学院大学大学院修了。
岩手医科大学助教授、作新学院大学教授を経て鳥取大学教授、同大学院教授。
2000年停年退官後は講演や執筆活動のかたわら、登山・ハイキングを楽しむ。
現在「とちぎの歴史と文化を語る会」会長。
[栃木県内の方言に関する主な著書]
『栃木県方言辞典』(桜楓社)、『栃木の方言をたずねて』(白帝社)、『栃木県方言語源辞典』(落合書店)、『栃木弁ばんざい』(随想舎)他。
本文挿絵 鈴木 京子(すずき きょうこ)
写真提供 飯塚 英夫(いいづか ひでお)
目 次
栃木方言の特徴
動物に関する方言
アイソ うぐい(石斑魚)・あかはや・ざこ 28
アオ まがも(真鴨) 28
アオソ かわらひわ(川原鶸) 29
アカジリ あぶらぜみ(油蝉) 30
アリンドン あり(蟻) 31
イッコンヤキ 一尾の魚 32
イナシ なめくじ(蛞蝓) 32
オーシンチクチク つくつくぼうし 33
オーヤマゲンザン おにやんま(鬼蜻蜒) 34
オカグラムシ てんとう虫だまし 34
オガミジョーロー かまきり(蟷螂) 34
オショーデン せきれい(鶺鴒) 35
オタマンゲロ お玉じゃくし 36
オップリムシ けら(螻蛄) 37
オトカ きつね(狐) 38
オニムシ かぶとむし(兜虫) 39
カッパムシ あめんぼう(水馬) 40
カマギッチョ とかげ(蜥蜴) 41
カンカンドリ くいな(水鶏) 41
ギチギチバッタ とのさまばった(殿様蝗) 42
キックジリ きつつき(啄木鳥) 43
クチハビ まむし(蝮) 44
ケサカッカ こおろぎ(蟋蟀) 44
ゲンザ とんぼ(蜻蛉) 45
ジシングモ じょろうぐも(女郎蜘蛛) 46
シトト ほおじろ(頬白) 47
ジンジン せみ(蝉) 48
ソートメムシ みずすまし(水澄) 49
タナギネコ 人になつかない猫 50
チッポケッポ ありじごく(蟻地獄) 51
チョーチョベッコ ちょうちょ(蝶々) 52
ネギサンバッタ はたはた 53
バカスカシ じょうびたき(尉鶲) 54
ハサミムシ くわがたむし(鍬形虫) 55
ババスッコ ほとけどじょう(仏鰌) 56
ヒラッカ かめむし(亀虫) 57
フクロズク ふくろう(梟) 58
ホッタレ 産卵が終わって精気を失った魚 59
植物に関する方言
アマナ やぶかんぞう(藪萓草) 62
イシビ あすなろ(翌檜)・ひば 62
オイランバナ きょうちくとう(夾竹桃) 63
オコワグサ いぬたで(犬蓼) 64
オゼンバナ ふしぐろせんのう(節黒仙翁) 64
カーライチゴ おきなぐさ(翁草) 64
カギッコノキ みずき(水木) 65
カラスエモ からすうり(烏瓜) 65
キツネノコンペト きつねのぼたん(狐の牡丹)66
ゲーロッパ おおばこ(車前草) 67
コーセンコ ほうせんか(鳳仙花) 68
コバン はんのき(榛木) 68
サルナメシ りょうぶ(令法) 69
ジゴクサミ どくだみ 70
ジゴクノカギッツルシ すぎな(杉菜) 70
ジジババ しゅんらん(春蘭) 71
ジダンボ かし(樫)・くぬぎ(櫟)の実 72
ジャンボンバナ ひがんばな(彼岸花) 73
ジロッコタロッコ すみれ(菫) 74
スッカンボ いたどり(虎杖) 75
スモートリバナ すみれ(菫) 76
ゼネノキ つげ(黄楊) 76
チンコロ ねこやなぎ(猫柳) 77
ツンギノコ つくし(土筆) 78
テンキソー まつばぼたん(松葉牡丹) 79
テンググサ へくそかずら(屁糞葛) 79
テンマリバナ れんげそう(蓮華草) 80
トッカンバナ つりがねそう(釣鐘草) 81
トコロテングサ つゆくさ(露草) 82
ナナクサ なずな(薺) 83
ネバリモチ ははこぐさ(母子草) 84
ネムッタ ねむのき(合歓木) 85
ノデンボ ぬるで(白膠木) 86
ピーピーグサ
すずめのてっぽー(雀鉄砲)・やぶかんぞー(藪萓草) 87
フキボッポ ふきのとう(蕗の臺) 87
フクンベ かんぴょう(干瓢)・ゆうがお(夕顔) 88
ホキル 草などが成長する 89
ボサッコ 草木の茂っているさま 90
ボンバナ さるすべり(百日紅) 90
ボンバナ ききょう(桔梗) 91
ボンバナ おみなえし(女郎花) 91
マグソッキノコ 馬糞たけ・どこへでも出かけたがる人 92
マツポグリ まつかさ(松毬) 93
ミミダレグサ ゆきのした(雪の下) 93
季節や自然に関する方言
イキレル 暑さが厳しい 96
イズンボ 川底が深く淀んでいる所 96
イテル 凍る 97
イナサカゼ 南東の風 97
ウズブレル 寒さに震えてうずくまる 98
オトユキ 二回目の雪 99
オロッポー ひかげやま(日陰山) 100
ガシドシ 飢饉の年 100
カンカチヤマ はげやま(禿山) 101
コーリンボ つらら(氷柱) 101
ザッポイ 草が朝露に濡れて湿っぽいさま 102
サビー 寒い 103
シミル 肌身に厳しい寒さを感じる 104
ジャバゴケ がけくずれ(崖崩) 104
タッペ しもばしら(霜柱) 105
テルミ ひなた(日向) 106
フッコシ かざはな(風花)・ふぶき(吹雪) 106
メメクル 芽生える 107
ワタクシアメ 通り雨 108
衣・食・住に関する方言
アイ しいな・十分に実ってない籾 112
アカナス トマト 112
アマヤ なや(納屋) 112
アライッツァラシ 古い小物 113
アライマテ 食器洗い 113
イキモガリ 生け垣 114
イモ さといも(里芋) 114
エジッコ わら製のかご 115
エスス 舌がよく回らない人 116
オマッツァン かどまつ(門松) 117
カギマーシ すいじ(炊事) 117
カラミモチ 大根下ろしにくるんだ餅 118
カンカンメシ むぎめし(麦飯) 118
カンプライモ じゃがいも 119
クチッパライ 常食を食べること 120
ケッコロガシ しょうごいんだいこん(聖護院大根) 121
コウルカ 鮎の子を塩漬けにしたもの 121
コジハン 午後の間食 122
コシブトン のらぎ(野良着) 122
コテズッポ つつそで(筒袖) 123
コビツク こげつく(焦げ付く) 124
ササラ 竹で作ったたわし(束子) 125
サシコ ことりかご(小鳥籠) 125
シッポコソバ 山鳥の肉入りそば 126
シモシラズ しぶがき(渋柿) 126
シモツカレ 大根・人参・鮭などを煮込んだ食べ物 127
ションベングリ 未熟な栗 128
ジンコ 踏み台 129
セーバン まないた(俎) 130
セーフロ ふろ(風呂) 130
ゼンビン いなかじるこ(田舎汁粉) 131
チョーツバ 便所 132
ツケアゲ てんぷら(天麩羅) 132
ツボグリ 落ち栗 133
トコゲル 畳や柱などが腐る 134
トンボグチ 出入り口 134
ナベッカブリ くろかわ(茸の名) 135
ハシヤスメ おかず(御数) 136
ハンギリ 飯を入れる桶 137
ヒトガタゲ 一回分の食事の量 138
ヒョーヒョーグリ 毬の真ん中にある栗の実 138
フクデモチ 丸くまるめた餅 139
ボータレ ぼろ着物 139
ホードシ めざし(目刺) 140
ホーホーヤキ たいやきの類 140
メッコメシ 生煮えの飯 141
モダラ たわし(束子) 141
生活や身体・血縁などに関する方言
アカマンマ ち(血) 144
アッペカオ べそをかいた顔 144
アブラムシ ろくでなし 145
オトダキ 出産祝い 145
オトモリ こもり(子守) 146
オヒトツ お手玉 147
オトヤ 二度目の妊娠 148
オメンコ よい子 149
カチグリアタマ いしあたま(石頭) 149
カナババ 初子の最初の糞 150
カンゾカンゾ よい子 151
キセンヤミ 清潔の度が病的であること、またその人 151
クサッポ かさ(瘡)・吹き出物 152
クロナジミ くろあざ(黒痣) 152
ケンケントビ 片足跳び 153
ザンバライ 宴席で最後まで残る人 153
セーフルモコサン 家になつかない婿 154
タビゲーリ 離婚した女性 154
タルイレ 口固め・婚約 155
チタキ つばき(唾液) 156
チンゲ 後頭部に剃り残した髪の毛 156
トーミモコー 才能のちょっと足りない者 157
ドンズキ ぶらんこ 158
ナタ のぐそ(野糞) 159
ノザエル のどにつまる、またはつかえる 159
ハナグラ いびき(鼾) 160
ハンコ 頭髪の半剃り 161
ヒッパリ 親戚・遠い親戚 162
ヒャクヒロ ちょう(腸) 163
ホソビ ほくろ(黒子)・しみ(肝斑) 163
ボッコミ 二度目の夫 164
ホッタブロ ほお(頬) 165
マケ 血族・一族 166
マメゾー 芸人・多弁者 166
メカイゴ ものもらい(麦粒腫) 167
メナシ あかぎれ(皹)・ひび(皹) 168
ムギッポ 怒りやすい人 169
モッコヤミ 仮病で寝込むこと 169
ワッカ わ(輪) 170
職業や作業(労働)などに関する方言
アギ 釣り針の鈎 172
アキマデ 秋の収穫 172
アラク 新しく拓いた畑 173
エシゴト 共同作業 173
エズク 水田の土が固まる状態になる 174
エンザボッチ さんだわら(桟俵) 175
オーゼッショ 獣の狩猟 175
カキセン 共同作業に出られない人が出す金 176
カチニ 歩いて持ち帰る荷物 177
ガラミセ おもちゃや(玩具屋) 178
クワガシラ 農作業を中心となって行う人 178
サギッチョ 三本足の支え棒 179
ザザッカブ 切り株 179
ショウ 背負う 180
スクボ 稲や麦の空穂 181
セッチンデーク 技術的に劣る大工 181
ソデンボ 痩せていて収穫の少ない田畑 182
タツメ けものみち(獣道) 182
ツブテ つちくれ(土塊) 183
テナゴ よく面倒みること・草木などをよく手入れすること 184
ナガッチョーバ 建築・工事の半ばで酒宴をすること 184
ナベップタデーク 技術的に劣る大工 185
ノッポ 肥料分のない深い土・赤土・軽い土 185
ハソンスル 修繕する 186
ハデ いねかけぼう(稲架棒) 187
マザス 種を蒔き足す 188
マッツラ わらの先端を結び合わせたもの 188
ヤジッタ 湿地・湿田 189
感情・動作・状態などに関する方言
アッカアッカ びくびくするさま 192
アッタラモン 大切な物・惜しい物 192
アッチャイ 新しい 193
アボコ あわ(泡) 193
アモト 橋のたもと 193
アワシマサマ 飾り過ぎること 194
イシコイ 醜い 194
イチコヤキ いろりの熱い灰の中に入れて焼くこと 195
イドコロネ 仮り寝 195
イマーシ さっき・いましがた 196
イマット もっと・もう少し 196
インニンスル 嫌う 197
ウッツァシー うるさい(五月蝿) 197
ウデッコキ 力の限り・精一杯 198
ウラ 後ろ 198
エカイ 大きい 199
エゲ 余計なお世話 200
エズカク
もっともらしい嘘をいって相手に責任をなすりつける 201
エバ えさ(餌) 201
オシアイ 「無」の状態にすること 202
オッピシャグ 押し潰す 202
オッペシコム 無理に押し込む 203
オッポカス 約束を破棄する 203
オワザト 少しばかり・ほんのわずか 204
ガオル 自信を失い弱る・困る・がっかりする 204
カッペナス けなす(貶) 205
カベット ねばつち(粘土) 205
カマブタツイタチ 旧七月一日 206
ガレル 衰弱する 207
カンゾー かわいがること・寵愛 207
クサル 濡れる 208
グゼル 地鳴きする 208
ケグム 口をつぐむ 209
ゴジャス 壊す 210
ゴジャッペ うそ(嘘) 210
ゴセーヤク 立腹する 212
コッペクサイ ませている・大人じみている 213
コワイ 疲れたさま 213
サイギョーブチ じゅんれい(巡礼)・へんろ(遍路) 214
ザクマタ ふたまた(二股) 215
サッツァイナシ 考えなし・軽率なこと 216
ジネ 時間 216
ショッパジメ 一番最初・物事の初め 217
ゾンキ ぶあいそう(無愛想) 217
ダイジ だいじょうぶ(大丈夫) 218
チオゼー ずる賢い 219
チク うそ(嘘)・でたらめ 220
チダラマッカン ちだるま(血達磨) 220
チョーガ まじめ(真面目)・まとも 221
ツッカケマンゴ 擦り合い・押し合い 222
ツッペル 水たまりに入る 223
デガラガイ 出て行くのに時間がかかること 224
トロッペシ いつも・しょっちゅう 224
ヌタバ 猪の泥浴び場 225
ネコマル 泥深い所などに入り込む 226
ネマチ 就寝・寝ること 226
ノダル 這う・いざっていく 227
ハー もはや・もう 227
バイサリアウ 奪い合う 228
ハスッケ 斜め 229
ハナエル 用意する・準備する 229
ヒボエ 炎・火の粉 230
フケル 発情する 230
ベー ~でしょう(推量) 231
ヘーシテ 終日 232
マガッテミル のぞいて見る・のぞく 233
ムデ 無理・乱暴 233
メンゲ かわいい 234
モチザッペナイ 物持ちがわるい・扱い方がわるい 235
モッコバラタテル すぐに腹を立てる 235
ヤベ 行こう 236
ヨジャル 座った状態で動く 236
ヨッコヨリ 道草をすること 237
ヨビツカイ 悲悼・訃報 237
ヨメゴト ぐちをいうこと 238