田中正造と利根・渡良瀬の流れ
それぞれの東流・東遷史
布川 了
従来、「治水」の観点から多く説かれてきた利根川東遷史を、「関宿・逆川」に軸足を置き、縄文海進の時代にまで遡って「利水」の視点からとらえ直した力作。田中正造の治水行脚をたどり「利根川の明日」を展望する。
四六判/232頁/定価1980円(本体1800円+税)
ISBN 4-88748-100-4
著者プロフィール
布川 了 ふかわ さとる
1925年、群馬県邑楽町に生まれる。
田中正造研究の草分けともいうべき渡良瀬川研究会を1973年に結成、代表幹事として運動を推進する。地元の正造研究団体の顧問を務めるなど、多方面に活躍中。
[主要著作]
『足尾銅山鉱毒史』『亡国の惨状』(共著)『田中正造と足尾鉱毒事件を歩く』『田中正造 たたかいの臨終』『田中正造と天皇直訴事件』そのほか『田中正造と足尾鉱毒事件研究1~13』に論文多数掲載。
目 次
第一章 足尾銅山鉱毒事件と利根川東流・東遷
1 田中正造の関宿呪詛 15
2 関宿棒出しと谷中村 19
3 利根川東遷は「承応三年」ではない 29
4 利根川の東流・東遷問題 35
第二章 古代の利根川・渡良瀬川
1 汎利根川の時代 41
2 東遷を続けた渡良瀬川 45
3 将門の運河 50
4 古来内陸水運の要だった関宿 54
5 縄文海進と関宿水路(海峡) 62
第三章 中世の利根・渡良瀬改修工事
1 利根川「変遷考」の考 67
2 汎利根川水運と関宿舟航可否論 69
3 太田道灌の利根川改修のねらいは? 73
4 長尾氏の渡良瀬川改修 78
5 人工の難所権現堂堤 81
6 権現堂堤築造―利根川東流第一号工事 85
第四章 近世初期の利根・渡良瀬改修工事
1 文禄年間の利根河道整備事業 90
(1)会の川締切りと中条堤(松平忠吉) 90
(2)利根川左岸堤工事(榊原康政)と中条堤 95
(3)渡良瀬川改流工事(榊原康政) 98
2 元和年間の開削・締切り工事 102
3 寛永年間の大工事 108
(1)鬼怒川付替え 109
(2)小貝川付替え 111
(3)赤堀増削と佐伯渠開削 111
(4)江戸川開削 112
(5)権現堂川・逆川増削―利根川東流本格化 113
4 渡良瀬川の寛永工事 117
5 寛文年間の工事 120
(1)寛文五年の逆川付替え 120
(2)寛文年間の逆川付替えはなぜか 128
(3)矢場川付替え工事 131
(4)渡良瀬水運の発展 134
(5)渡良瀬舟運の終点―正造日記より 138
第五章 水運と水災の相克による変化
1 浅瀬の出現と対策 140
2 宝暦利水・治水調査 143
3 浅間噴火と利根川 147
4 赤堀川の増削 148
5 赤堀川の利根川視 150
6 関宿棒出しの設置 154
7 吉田松陰の利根川下り 156
第六章 利根川南遷論と鉱毒事件
1 利根川治水の基調―古利根コース 159
2 足尾鉱毒と渡良瀬沿岸事情 165
3 谷中村遊水池化強行と田中正造 171
4 渡良瀬川改修工事と田中正造最晩年のたたかい 174
5 渡良瀬川改修工事と被害民の分裂 178
6 越名・馬門河岸の滅亡 186
第七章 利根川東遷の完結と課題
1 利根川東遷の完結 187
2 決潰口碑は語る―改修工事の反省 190
3 利根川治水のアキレス腱―利根川放水路 193
4 田中正造の治水論にまなぶことは 200
5 利根川の明日への提言 205