随想舎 

増補 田中正造たたかいの臨終

布川 了

 「問題から言ふ時にハ此処も敵地だ…」
 病床から闘いは続く。正造、いまだ瞑せず。
 渡良瀬川畔庭田家での病床三十四日、死を前に、正造は何を想い、何を語ったか。
 「今度この正造が斃れたのは、安蘇・足利の山川が滅びたからだ-日本も至るところ同様だが-。故に見舞いに来てくれる諸君が、本当に正造の病気を直したいという心があるならば、まずもってこの破れた安蘇・足利の山川を回復することに努めるがよい。そうすれば正造の病気は明日にもなおる」(本文より)
 田中正造没後百年記念出版

新書判/並製/160頁/定価1100円(本体1000円+税)
ISBN 978-4-88748-240-1
2011年5月25日 第1刷発行

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著者プロフィール

布川 了  ふかわ さとる

 1925年、群馬県邑楽町に生まれる。群馬師範、滋賀海軍航空隊、早稲田大学卒業。
 田中正造研究の草分けともいうべき渡良瀬川研究会を1973年に結成、代表幹事として運動を推進。現在は顧問。足尾鉱毒事件田中正造記念館名誉館長。
 著書『足尾銅山鉱毒史』『亡国の惨状』(共著)『田中正造と足尾鉱毒事件を歩く』『田中正造と天皇直訴事件』『田中正造と利根・渡良瀬の流れ』。そのほか『田中正造と足尾鉱毒事件研究1~15』に論文を多数掲載。

目 次

1 田中正造─ひたむきの生

2 日記の絶筆について

  校長大ニよみす/日記の読みについて─治水か清水か─/何とて我れを/諒闇あけ

3 ふたたびは立たず

  庭田家に病む/天の仕事がある/「田中翁病床」と「病中事務所」/待ちわびた残留民来る

4 鉱毒地で死ぬ

  木下尚江再訪/さあ、できるか、できないか/木下尚江と周囲の人々/病中の栃鎮翁/
  「この人臭き」か/大正天皇、日光へ

5 正造危篤

  現在を救え/ババアにもやってくれ/胃癌・幽門狭窄・心臓腎臓障害/大水がくる/
  教育をしなかった/野口春蔵、尚江と争う/天ぷらを食べる/苦悶する正造/山田友次郎との和解

6 臨 終

  再言「教育をしなかった」/日本の打ち壊し/「最後の語」/問題から言ふ時には此処も敵地だ/
  最後の怒声/臨終の目撃者たち/最終の発言「起きる」「いけねェ」/死生ノ別ツナシ

7 葬送と行幸と

  分骨紛争/遺 品/行幸啓と密葬と/正造死後の清四郎家

8 本 葬

  分骨申請、行幸啓御礼/本葬儀/葬儀批判/分骨式

  付

  葬儀次第書/田中正造葬儀弔辞捧呈者/小林茂八弔詞